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飲食店の仕入れはどこからがベスト?仕入れ先を選ぶときのコツを解説
飲食店の仕入れ先を選ぶときのポイント
飲食店の仕入れ先を選ぶときは、次の6つのポイントから順に決めていきましょう。
- 必要な材料を決める
- 原価を想定する
- 品質をチェックする
- サポートが手厚いか
- 供給量の安定性を確認する
- 1社だけに絞らない
まずは、これらについて詳しく解説します。
- メニューに必要な材料を決める
使う材料によって、適切な仕入れ先は異なってきます。そのため、仕入れ先を決める前に、まずはメニューに必要な材料を決めておきましょう。
たとえば関東の出店で、魚が多いメニューの店なら豊洲市場などから仕入れるのが選択肢になります。果物が多いカフェなら仲卸業者からの仕入れだけではなく、商品の新鮮さが決め手の青果店からの仕入れも検討すべきです。
メニュー次第で仕入れ先はまったく違うため、必要な物が定まってないと仕入れ先を絞るのも難しいです。メニューに必要な材料を明確にしてから、仕入れ先選定を始めましょう。
- 原価を想定する
仕入れが売上に対して適切かどうかを判断するため、原価を想定してみましょう。
この時、原価が高すぎる場合は仕入れ先や商品グレードを変える判断が必要です。無理のある原価率設定は経営を圧迫するため、現実的な設定を行う必要があります。
なお、一般的に飲食店における原価率は25~30%が目安と言われていますが、実態としては人件費率や家賃率、業態などによっても異なるでしょう。
- 品質をチェックする
仕入れ先候補から実際に材料を購入し、品質チェックを行うことも大切です。材料の品質は提供する料理に直結するため、確認しておくと失敗するリスクを抑えることができます。
なお、品質をチェックする際は、実際のメニューとして調理してみるのがおすすめです。調理した料理の仕上がりを確認することで、目指す料理に適した材料かどうかを判断できます。
また、卸業者や通販サイトによってはサンプルを提供しているところもあります。お試しサービスがあれば利用して、色々な仕入れルートを試してみるのも良いでしょう。
- サポートの手厚さを重視する
仕入れ先選定の際は、サポートの手厚さも重要な判断基準のひとつです。
仕入れ先の中には、食材の切り込みや下処理などのサポートを提供しているところがあります。店舗の調理人やスタッフが少ないケースにおいて有用であるほか、仕込み時間の短縮や食材ロスの削減にもつながるため、作業を効率化したい場合には活用を検討すると良いでしょう。
- 供給量を調査する
仕入れ先が希望する供給量に対応できるかどうかも調査する必要があります。卸業者は大量発注には対応しやすい一方、小ロットでの注文には応じられない場合があります。一方で小売業者や通販では大量注文には上限があることもあるので注意が必要です。
また、日によって配送対応ができない業者もいるため、安定的かつ十分な供給が可能かどうかは、仕入れ先選定の重要なチェック項目です。
- 1社だけに絞らない
仕入れ先選定の際は、特定の1社に限定せず、複数の選択肢を確保することが重要です。仕入れ先は絞ってしまうと、何かがあったときに材料の供給が止まってしまうリスクがあります。
一方、複数の仕入れ先を確保しておけば、ある仕入れ先で供給が滞った場合でも、別の仕入れ先から不足分を調達することができます。また、価格交渉力の向上や季節商品を確保しやすくなるなど、それぞれの取り扱い商品の欠点も補うこともできるため、必要なものを適正なコストで迅速に手配しやすくなります。
飲食店の代表的な6つの仕入れルート
飲食店の仕入先には、代表的なものとして以下のようなルートが6つあります。
- 小売店
- 卸売業者
- 市場
- インターネットサイトやカタログ通販
- 生産者と直接契約
- 展示会で仕入れ先を開拓
ここからは各ルートを詳しく見ていきましょう。
- 小売店へ買い出しに行く
小売店は、一般的なスーパーマーケットや地元の八百屋さんなどのお店が該当します。足を運びやすく、実際に材料を見て仕入れることができるのが強みです。
ただし、一般向けの価格設定であることから、仕入れコストが抑えにくいデメリットがあります。配送や大量購入が難しいケースも多く、メインの仕入れ先としては使いにくい可能性があります。
急に材料が足りなくなったときなど、部分的な仕入れに使うのがおすすめです。
- 卸売業者と取引する
卸業者は漁師や生産者から買い付け、スーパーマーケットや他事業者などへ卸す業者を指します。小売店よりも安い仕入れ価格での取り引きが可能で、価格の安さと仕入れられる数に強みがあります。
飲食店と取り引きしていることも多く、店舗へ材料を定期配送してくれるサービスもあります。
飲食店の場合はまとまった数を仕入れる機会が多くなるため、メインの仕入れ先の1つとして取引先を見つけておくと、安定的な仕入れを実現しやすくなります。
- 市場で競り落とす
特に欲しい材料がある場合には、市場で競り落とす方法もあります。市場のルールに沿って買い付けから仕入れまですることが求められますが、仲卸の人などからアドバイスを受けられれば、貴重な食材を見極めることもできるでしょう。
市場への知識や経験があり、買い付けたい特別な材料がある場合にはおすすめの仕入れルートです。
- インターネットサイトやカタログ通販を利用する
仕入れ専門のインターネットサイトやカタログ通販では、一般的なネットでの買い物と同じような感覚で材料を仕入れることが可能です。足を運ぶ必要がなく、スマホで簡単に注文できるため仕入れにかかる労力が少ないのが特徴です。
また、小ロットでの取り引きが可能なケースも多く、比較的大きくない飲食店でもお試しで仕入れがしやすくなっています。時間や労力のコストを抑えた仕入れをしたい場合や、小ロットでの仕入れをしたい場合には特におすすめです。
- 生産者と直接契約する
生産者と直接契約して、店舗に仕入れるという方法もあります。仲卸業者を通さないため手元に届くまでが早く、新鮮な材料を仕入れることができるのが大きな強みです。
また、生産者が市場には出回らない材料を紹介してくれることもあり、希少性が高い材料に出会えることもあります。
一方で材料の検討から契約まで、自ら生産者の元へ足を運ばなければならないため、比較的大きな労力がかかります。しかし体力と時間に余裕がある人や、素材にこだわりたい人にはおすすめの方法です。
- 展示会で仕入れ先を開拓する
食品に特化した展示会は、飲食店の仕入れ先を開拓する上で有効な手段です。
展示会では、多数の卸売業者や生産者が集まり、自社の商品を紹介しています。直接商品を見て、味や品質を確認できるほか、販売担当者から詳しい説明を受けられるメリットがあります。また、新商品や季節商品など、普段は目にすることのない食材や食品に出会えるチャンスです。
「JFEX」など、その場で商談できる展示会も存在します、積極的に活用しましょう。
飲食店の仕入れで失敗しないためのポイント
飲食店の営業において重要な仕入れにもしもの事態が起これば、商品の提供に影響が出てしまいます。仕入れで失敗しないためには、次の4点を意識しましょう。
- できるだけまとめて発注する
- 仕入れるタイミングを見極める
- 食材ごとに仕入れ先を分ける
- 定期的に仕入れ先の見直しをする
- できるだけまとめて発注する
仕入れは、数が多いほど単価を安くすることができます。したがって、可能な限りまとめて発注することで、単価を抑えることが重要です。一度に払う金額は大きくなりますが、中長期的に見れば費用の削減につながる可能性があります。
ただし、短い期間で傷んでしまう食材を大量に仕入れるわけにはいきません。まとめ買いに適しているのは、酒類、油、缶詰など、確実に消費でき、長期保存が可能な食材です。まとめ買いによって在庫が増えるため、適切な在庫管理と使用計画も必要になります。
- 仕入れるタイミングを見極める
材料が無駄にならないよう、仕入れのタイミングを見極めるのも大切です。食品ロスを最小限にできれば、店舗経営にかかるコストも抑えることができます。
なお、仕入れのタイミングを見極めるためには、安全在庫を設定するのがおすすめです。安全在庫は1日の材料の使用量を計算し、1週間在庫切れを起こさない量を概算して設定します。
在庫に合わせて発注すれば、無駄なく材料を仕入れられるため、食品ロスを減らすことができます。
- 食材ごとに仕入れ先を分ける
仕入れはまとめるほうがお得ですが、味や品質にこだわるなら食材ごとに仕入れ先を分けるのも店舗の魅力につながるでしょう。
たとえば卸業者でも精肉に強い業者と、鮮魚に強い業者がいます。専門としていれば種類も多くなりやすく、品質を実感できるような食材を扱っている可能性も高まります。
1つ1つの食材をどこまでこだわりたいかによって、仕入れ先を分けるかについても考えておきましょう。
- 定期的に仕入れ先の見直しをする
定期的に仕入れの見直しをすることもポイントです。安定した仕入れが続いている場合、無理に見直す必要性がないように感じるかもしれません。
しかし、より良い条件で仕入れできる業者を見つけられれば、利益率アップや品質向上も期待できます。
飲食店の仕入れに関するQ&A
最後に、飲食店の仕入れに関する疑問について、回答とあわせて解説します。
ご自身の店舗で抱えている疑問があれば、解消に役立ててください。
- 原価率の計算方法は?
原価率は以下の計算式で算出できます。
- 原価率=仕入れ額÷売上高×100
一般的に原価率が25~30%を超える場合は、材料費が高い状態と言われています。しかし、業態や他の経費の割合などによっても異なるため、1つの目安として考えるようにすると良いでしょう。
- 仕入れ先について相談できる場所はある?
飲食店の仕入れ先を見つけたい時の相談先には、さまざまなものがあります。
地域の商工会議所や飲食業界に特化した団体は、飲食店経営に役立つさまざまな情報を提供してもらえる可能性があるほか、同業者を通じて信頼できる仕入れ先を紹介してもらうことも可能です。
また、食品業界や特定の食品カテゴリに特化した展示会や見本市は、新しい商品や仕入れ先を見つける絶好の機会として活用できます。
最適な仕入れ先を見つけるためには、自身のニーズを明確にしたうえで複数のソースから情報を収集し、可能な限り仕入れ先と直接交渉をおこなうことが大切です。
- 仕入れの勘定科目は?
飲食店の仕入れの勘定科目は、「仕入れ」になります。事業に必要な食材を仕入れた費用は、すべて「仕入れ」として仕訳します。
ただし、状況によっては「仕入」ではなく、「材料費」や「商品」などの勘定科目を用いて仕訳することもあります。
- 仕入れの消費税は?
仕入れでは消費税が乗った金額を仕入れ業者へ支払いますが、支払った消費税は後で「仕入れ税額控除」として控除することができます。
ただし仕入れた物の消費税が8%と10%が混在している場合は、注意が必要です。納税の際には食材と資材を区別して帳簿し、各消費税別にも分けて記載しなければいけません。
帳簿を作成する際には気を付けて記載しましょう。
まとめ
飲食店の仕入れ先は、メニューを決めてから原価率を想定するとスムーズに決めやすいです。これらが定まっていないと、仕入れルートや優先すべき素材が決められません。
本記事では、主な飲食系の仕入れルートとして6つをご紹介しました。ニーズを定めて優先したい食材やこだわりから仕入れ先を探していくのがおすすめです。
なお、仕入れで失敗しないためには、大口発注やロスの出にくい仕入れ発注でコストを抑えるのも大切です。もしこだわりたい場合は食材ごとに仕入れ先を分ける方法もおすすめですが、定期的に仕入先を見直すといった工夫も続けていきましょう。
【記事監修者】
福田 真哉
飲食店コンサルタント兼飲食店オーナー。学生時代にデザインを学んだ後、大手企業、メーカー、外資系企業などの宣伝広告部門に従事。退職後、飲食業界へ転身。
割烹やレストランなど、様々なタイプの飲食店に勤務した後、現在は東京・浅草でアミューズメントバーを営む。
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