食品の品質を守るリーファーコンテナとは?メリットとデメリットから輸出事例までを解説

日本の高品質な食品を海外へ輸出する際、課題となるのが「鮮度維持」です。航空便は高コスト、ドライコンテナによる海上輸送は品質変化のリスクが伴います。本記事では、その課題を解決できる「リーファーコンテナ」の基礎知識から、メリットとデメリット、そしてリーファーコンテナを使った実際の輸出事例について解説します。

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●目次

リーファーコンテナとは

リーファーコンテナとは、コンテナ内部に冷却装置を備え、温度管理が可能な輸送用コンテナを指します。別名称で「Reefer Container / Refrigerated Container」とも呼ばれています。通常のドライコンテナとは異なり、マイナスからプラスまで幅広い温度帯に対応できるのが特徴で、コールドチェーンの一翼を担っています。庫内の温度を極めて厳密に管理できるため、温度変化に敏感な貨物の品質維持に欠かせない存在です。


リーファーコンテナの主な用途

リーファーコンテナは、多様な温度管理ニーズに対応し、様々な分野で活用されています。

最も一般的な用途は、鮮度保持が求められる野菜や果物などの生鮮食品やワインなどを、安定した状態で長距離輸送することです。また、超低温域での管理が必要なマグロなどの水産物や牛肉といった食品の輸送にも用いられています。さらに食品だけでなく、厳密な定温管理が求められる医薬品(ワクチンなど)や精密機器の輸送にも適しています。 輸送用途以外にも、イベント会場や工場の敷地内において、一時的な冷蔵・冷凍倉庫として活用されるケースも増えています。このように、リーファーコンテナは貨物の輸出入や輸送のためだけでなく、貨物の品質を守るための移動する保管庫として、重要な役割を果たしています。

リーファーコンテナのサイズと容量

コンテナ種類

 積載容積(㎥)

最大積載可能重量(kg)

積載可能段ボール数
(三辺計約100cm)

20フィート 

 28㎥ 

27,380~27,620kg 

約800個 

40フィート 

67㎥ 

29,060~29,870kg 

約1,950個 

リーファーコンテナの主なサイズは、国際規格(ISO規格)に基づき「20フィート」と「40フィート」の2種類になります。20フィートは、小〜中ロットの輸送に適していて、40フィートは、大量輸送やかさばる貨物に適しており、用途に応じて使い分けられます。

ただし、リーファーコンテナには壁や天井に断熱材や冷却装置が埋め込まれており、ドライコンテナよりも内部の容量が少なくなります。そのため、ドライコンテナと同じ認識でカートン数を計算すると、貨物を積みきれない恐れがあるほか、積みすぎることで冷気の循環が妨げられるリスクも生じます。容量いっぱいまで詰め込まず、余裕を持った積載計画が求められます。

出典:農林水産省「農林水産物・食品輸出の手引き」

リーファーコンテナの種類

リーファーコンテナは、一般的にマイナス30℃からプラス30℃程度の温度設定が可能なタイプが主流です。 しかし近年では、単なる温度管理にとどまらず、生鮮食品の特性に合わせた特殊な機能を搭載したコンテナも登場しています。最適な鮮度管理を実現するためには、これらの特殊なコンテナを貨物の性質に合わせて使い分ける必要があります。


CA(Controlled Atmosphere)コンテナ

CAコンテナは、温度管理に加えて、コンテナ内の酸素、二酸化炭素、窒素の濃度を能動的にコントロールする機能を持っています。例えば、青果物は収穫後も呼吸を続けて成熟が進みますが、このコンテナなら呼吸速度を低下させることができます。これにより、青果物の成熟や老化の進行を遅らせ、鮮度を長期間維持できます。

また、CAコンテナは、熟成を早めるエチレンガスを吸着・除去する機能も有しており、輸送中の品質劣化を最小限に抑え、商品の寿命を延ばすことも可能です。そのため、20日を超えるような長期間の海上輸送においても、まるで現地で収穫した直後のような状態を維持できる点が強みです。通常のリーファーコンテナより運用コストは高くなりますが、鮮度維持による廃棄ロスの削減や、遠隔地への高品質な輸出を実現するうえで有効な手段です。


 鮮度保持電場装置が付属したコンテナ

鮮度保持電場装置が付属したコンテナは、庫内に特殊な静電場を形成させ、食品の鮮度を保持する機能を持っています。 この電場効果により、食品の細胞を安定化させたり、腐敗の原因となる微生物の活動を抑制する効果が期待できます。

特に、冷凍・解凍時に発生しやすい魚介類や精肉類のドリップ(旨味成分の流出)や、脂質の酸化を抑える点が評価されています。 そのため、高級食材や輸出用ブランド品など、品質そのものが商品価値に直結する貨物の輸送や保管によく利用されます。他社製品との差別化を図り、海外市場で高品質なブランドを確立したい場合に適しています。


冷凍専用コンテナ

冷凍専用コンテナは、一般的なリーファーコンテナでは実現が難しいマイナス50℃からマイナス60℃という超低温域を安定的に維持する機能を持っています。主に、超低温管理が必須とされる冷凍マグロなどの輸送や一時保管に使用され、特定の水産物輸送には欠かせないコンテナです。この温度帯の維持により、食品の劣化を防ぎ、獲れたての品質を長期間保てます。 ただし、コンテナ自体が高額であることに加え、運用には専門的な知識と厳格な管理体制が必要となります。

リーファーコンテナのメリット

リーファーコンテナを利用する最大の利点は、輸送する食品の特性に応じて最適な温度帯を設定できる点にあります。これにより、冷凍品から冷蔵品まで、多岐にわたる商品の品質を損なうことなく運べます。

これまで鮮度維持が難しかった生鮮食品であっても、長距離の海上輸送で安定的に運べるようになり、日本の高品質な食品を海外市場へ送り出す機会を増やせます。また、船便の定期的なスケジュールに合わせて出荷計画を立てられるため、季節変動や急な需要増減にも柔軟に対応できる、安定した物流体制を構築できます。


温度管理ができるため生鮮食品の鮮度を保てる

リーファーコンテナは、庫内の温度を通常マイナス30℃からプラス30℃まで、0.1度単位で細かく設定できる点が強みです。この機能により、常温、冷蔵(チルド)、冷凍(フローズン)の3温度帯を自在に切り替えられます。また、前述の通り、マグロなどの超低温管理が必要な貨物向けに、マイナス50℃からマイナス60℃に対応したコンテナや、青果物の呼吸を抑制し、空気中の濃度をコントロールできるコンテナも存在します。これにより、年間を通じて出荷時期が異なる多様な農産物・海産物に対しても、柔軟に出荷対応できます。


貨物を積み替えることなく輸送できる

リーファーコンテナを利用すれば、国内の出荷場所から最終目的地まで、貨物をコンテナから積み替えずに一貫輸送できます。トラック、鉄道、船舶と輸送手段が変わっても、コンテナ自体を載せ替えるだけなので、中身の貨物を積み替える必要がありません。

食品物流において、積み替え作業は温度変化による変質や異物混入、荷崩れによる破損のリスクが高まるタイミングです。 この積み替え工程を避けられることは、食品の安全性と品質を守る上で重要です。また、積み替え作業にかかる人件費や時間も削減できるため、トータルの物流コストやリードタイムの短縮にも寄与します。封印された状態での輸送は、セキュリティや衛生管理の面でも高い評価を得られるでしょう。


保管用コンテナとしても利用できる

リーファーコンテナは、輸送中だけでなく、物流拠点での一時的な保管が必要な場面でも、移動式の冷蔵・冷凍倉庫として利用できます。 港での通関待ちの時間や、現地の倉庫がいっぱいで入庫できない場合でも、電源設備さえ確保できればコンテナ内での温度管理を維持できるため、貨物の品質低下を防ぐことができます。

こうした機能により、万が一輸出先の倉庫の保管スペースがない場合でも、倉庫に入庫させない状態での保管が可能です。また、イベント会場や仮設市場など、冷蔵設備がない場所へ商品を直送し、そのまま販売拠点として活用するケースもあります。

リーファーコンテナのデメリット

リーファーコンテナは品質維持に有用ですが、ドライコンテナと比較して考慮すべき点がいくつかあります。特殊な冷蔵装置の維持費、冷蔵装置を稼働させるための電力消費、そして専門的なメンテナンスが常に必要となるため、基本的な輸送費が割高になる傾向にあるほか、電源確保や騒音対策などの配慮も必要です。

また、積載効率や床の強度といった構造上の制約もあり、これらを理解していないとトラブルの原因になるため、注意が必要です。さらに、単なる輸送機能だけでなく、電源供給の途絶や冷凍機の故障、誤った温度設定など、温度管理に関する専門的なリスクも存在するため、輸送中は厳重なチェック体制が必要になります。


冷蔵装置の稼働に電源設備が必要になる

リーファーコンテナの冷蔵装置を稼働させ、庫内の温度を維持するためには、常に安定した電源供給が不可欠です。船上では船舶の電源、港湾ターミナルでは陸上電源、そして内陸における陸上輸送では専用の発電機(ジェネレーターセット/Gen-Set)をコンテナに接続する必要があります。


冷蔵装置が常に稼働するため騒音が発生する

リーファーコンテナの冷蔵装置は常に稼働しており、その騒音は最高で約80~90dBと、一般的な室外機よりも高い水準に達します。そのため、住宅地に近い倉庫や店舗で作業を行う場合、夜間の騒音が近隣トラブルの原因になることがあります。搬入場所の環境を事前に確認し、状況に応じて防音対策や作業時間の調整を行うなどの配慮が必要です。


特殊な床構造のため強度に心配がある

リーファーコンテナの床は、冷気を循環させる「Tレール」という特殊な構造になっており、ドライコンテナに比べて強度が低い傾向があります。そのため、フォークリフトでの作業時は、床を破損させないよう細心の注意を払い、荷重分散などの対策が必要です。また、貨物の詰め込みすぎは冷気の循環を妨げ、品質劣化の原因となるため、通気性を確保した積載計画が求められます。

リーファーコンテナを利用した食品の輸出事例

食品の輸出において、リーファーコンテナは鮮度維持の要ですが、それだけで品質が完全に守られるわけではありません。 コンテナの機能に加え、品目ごとの特性に合わせた梱包や包装の工夫があって初めて、高品質な輸送が実現します。ここでは、日本の農林水産物・食品輸出における、リーファーコンテナ活用の具体的な成功事例をいくつかご紹介します。


青森県産のりんごの海上輸送

青森県産のりんごは、台湾、香港、インドネシアなどへ輸出されています。こうした輸出では、リーファーコンテナの設定温度を0〜1°Cに設定し、低温での品質保持に努めています。さらに、コンテナだけでなく梱包資材にもいくつかの工夫が施されています。

具体的には、輸送中の振動から守る衝撃対応包装に加え、発泡スチロール製の容器には小さな穴が開けられており、通気性が確保されています。 また、炭酸ガス障害を起こしやすい品種には、消石灰をアイスボックスに投入してガスを吸収させる対策も行われています。リーファーコンテナが温度管理を担う一方で、りんごの特性に対する緻密な梱包の工夫が、最終的な鮮度維持に貢献しています。

出典:農林水産省「農林水産物・食品輸出の手引き」


北海道産のながいもの海上輸送

北海道産のながいもは、米国、台湾、シンガポールなどへ輸出されています。これらの輸出では、リーファーコンテナの設定温度は3℃とされており、これより低くても高くても品質劣化や腐敗のリスクが高まります。

特に9月や10月の出荷分はながいもの品質が低下しやすいため、鮮度の維持にはリーファーコンテナが不可欠とされています。さらに、輸送中の乾燥を防ぎ、保湿効果を高めるための「おがくず」が鮮度維持包装として利用されています。リーファーコンテナによる精密な温度管理と、おがくずによる保湿という二重の対策により、長距離輸送において高い品質を維持し、現地の消費者に届けることが可能となっています。

出典:農林水産省「農林水産物・食品輸出の手引き」


宮崎県産のさつまいもの海上輸送

宮崎県産のさつまいもは、香港、台湾、シンガポールなどへ輸出されています。この輸出では、13〜15℃と比較的高めにリーファーコンテナの温度が設定されています。さつまいもは低温すぎると品質が損なわれるため、この温度帯が最適とされています。また、輸送中の結露を防ぐために、特別仕様の鮮度保持フィルムを使用する工夫も施されています。さつまいもは、神戸港でリーファーコンテナに積み込まれ、通関手続き・検疫検査を経て、コンテナヤードに留め置かれてから出港します。この過程で、さつまいもを適切な温度で数日間保管できるリーファーコンテナは、重宝されており、安定した輸出を実現するための重要な要素です。

出典:農林水産省「農林水産物・食品輸出の手引き」

まとめ

 リーファーコンテナは、食品輸出入における品質保持と、温度変化による品質リスクを低減するためのツールです。輸送品目の特性を深く理解し、それに合わせて設定温度を最適化するとともに、衝撃対応や保湿、結露防止といった緻密な梱包や包装の工夫を組み合わせることが、輸出入において重要です。

国際的な販路拡大を検討している食品メーカーにとって、リーファーコンテナの活用は、コスト効率と品質の両立を可能にする戦略的な選択肢となります。最新のコールドチェーン技術やリーファーコンテナの動向は、「“日本の食品”輸出 EXPO」や「国際 食品物流EXPO」などの専門展示会で常にアップデートされています。市場での優位性を保つためにもぜひ展示会にご来場ください。

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【記事監修者】

蜂巣 稔(はちす みのる)

東京都出身。物流ライター・ビジネスライター。大学卒業後、外資系ITにおける輸出入、国内物流の経験を経て日本コカ・コーラ(株)のSCM部門へ。SAPを利用した供給計画立案、在庫最適化、物流オペレーションの最適化やスキーム構築など、サプライチェーン領域における実務経験は21年以上。53歳で独立起業。企業取材、経営層インタビュー、事例紹介などBtoB領域で活動中。通関士、グリーンロジスティクス管理士、日本インタビュアー協会認定プロインタビュアー。宣伝会議 編集ライター養成講座卒業。生成AI・DX関連の執筆実績も多数。